成果報告
日本防衛学会(JSDS)令和5年度 研究大会の報告
【7月1日(土)】
部会1 自由論題(9:30 ~ 11:40 司会:宮本悟)
自由論題では3つの報告があった。最初の報告者である村上強一会員からは「航空自衛隊における救難部隊創設の経緯」についての報告があった。討論者である中島信吾会員からは創設における米国のかかわりについて、討論があった。2番目の報告者である相原正明会員からは「1950 年代の在日米陸軍撤退政策の検討―防衛責任の観点から」の報告があった。討論者である川名晋史会員から米国の大きな戦略からの視点について、討論があった。3番目の報告者である本名龍児会員からは「パリ講和会議における南洋諸島問題の議論」についての報告があった。討論者である相澤淳会員から南洋諸島が領土ではなく委任統治領になったことの評価について、討論があった。報告者ごとに、フロアーからも質問が多数あり、活発な議論が行われた。
共通部会(13:20~16:50 司会:武田康裕)
「安保関連三文書と日本防衛の課題」について、最初に中西寛会員より「安保関連三文書の意義と課題—政治と歴史の視点から」と題する基調講演が行われた。続いて、島田和久(前防衛事務次官)から「総合的な防衛力増強と防衛財源の在り方」、住田和明(元統合幕僚副長)から「統合司令部の設置をめぐる課題—統合運用と日米共同の視点」、高田克樹(元陸上総隊司令官)から「離島防衛をめぐる課題」、湯浅秀樹(前自衛隊艦隊司令官)から「総合運用体制下の優先課題」、武藤茂樹(元航空総隊司令官)から「統合防空ミサイル防衛の意義」について報告があった。パネルディスカッションでは、①専守防衛原則を堅持する一方で、スタンド・オフ防衛能力等を活用した反撃能力で抑止は可能なのか、②統合司令部の設置により、日米間の統合的運用がどこまで実現するのか、③GDP2%相当の支出水準を確保することで、抑止と統合に向けた自衛隊の役割拡大に応えることができるのか、という三つの論点を中心に討論された。最後に、フロアーから関連の質問が多数寄せられ、活発な議論が行われた。
【7月2日(日)】
部会2(10:00~12:00 司会:大原一郎)
「「反撃能力」の課題」をテーマに、3名の報告者(信田智人、尾上定正、稲石敦)から、「反撃能力」政策上の課題、自衛隊の反撃能力運用に必要な“Kill Chain”と日米共同の課題、スタンド・オフ・ミサイルの実現に当たり、についてそれぞれ報告が行われた。討論者(髙井晉)から、信田報告に対して、反撃の国際法上の解釈について、尾上報告に対して、反撃の実効の可能性や日米共同の可能性について、稲石報告に対して、現在計画されているスケジュールの実現可能性などについてそれぞれ質問があり、それに対して報告者からの応答があった。最後にフロアーも加わり活発な議論が行われた。
部会3(13:00~15:00 司会兼討論:外園博一)
「日本の防衛体制の強化に資する技術開発上の課題」をテーマに、3名の報告者(寺田大介、渡辺辰悟、濱野健二)から、魚型UUVに関する研究動向、電磁波領域利用の現状と課題、指揮統制へのAI適用研究についてそれぞれ報告が行われた。討論者(山本雅司)から、寺田報告に対して、生物模倣技術の発展の方向性やエネルギーやペイロード確保の可能性等について、渡辺報告に対して、自律分散的な戦い方を実現する上での電磁波領域における課題と解決の可能性やその優位確保の手段について、濱野報告に対して、運用者がAIを活用する際の技術観点からの注意点や「説明能力」等の技術的課題と解決の可能性について、また「領域横断」の観点から、3名の報告者に対して組織間の連携、技術の民生分野への波及、領域横断作戦への当該技術の寄与の可能性に係る質問があった。最後にフロアーも加わり活発な議論が行われた。
部会4(15:15~17:15 司会兼討論:川上高司)
「日米防衛協力: 日米防衛の認識のギャップ」のテーマで開催された。門間理良(拓殖大学)、磯部晃一(元東部方面総監)、川上高司(拓殖大学)からそれぞれ、「中国の軍事演習の意味と台湾の対応」、「島嶼防衛では米国海兵隊に何を期待するのか?」「拡大抑止の運用をめぐる日米のギャップ」について報告が行われた。司会兼討論者の細谷雄一(慶應義塾大学)からは、門間報告に対して、台湾本島への侵攻における政治的トリガー(習近平体制による統治の正統性確保)と軍事的トリガー(中国の軍拡が進んで容易というミスパーセプションの生起)、いずれの可能性が高いと考えるか、川上報告に対して、日本が核シェアを政策として検討する際のメリットとデメリットとは何か、磯部報告に対して、グレーゾーン事態を抑止するためにいかなる対処方法が考えられるか、という問題提起がなされた。フロアーからも関連の質問が相次ぎ、活発な議論が行われた。

ご案内
お陰様をもちまして、盛会裏に終了しました
初夏の候、皆様にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
このたび日本防衛学会では、防衛大学校の協力を得て、令和 5 年度研究大会を次のとおり開催する運びとなりました。
つきましては、ご多用中とは存じますが万障お繰り合わせのうえ、ご出席下さいますようご案内いたします。
なお、今大会では部会と部会の間のお昼の時間を利用して開催校について理解を深めて頂けるよう、7 月 1 日(土)には資料館開放(自由見学)、7 月 2 日(日)には防大ツアー(約 40 分間)を計画しておりますので、是非、ご参加ください。
令和 5 年 4 月 26 日
日本防衛学会 会長 國分 良成
開催日時:令和5年7月1日(土)09:30 ~ 18:00
7月2日(日)10:00 ~ 17:15
会場:防衛大学校 社会科学館3階 大教場
受付開始:7 月 1 日 8:45(土)
7 月 2 日 9:15(日)(いずれも社会科学館3階)
* * *
日本防衛学会 令和5年度研究大会プログラム
共通テーマ:安保関連三文書と日本の防衛戦略の転換
【7月1日(土)】(1日目)
午前の部 研究報告部会 09:30 ~ 11:40
部会1 「自由論題」 社会科学館3階 大教場
○報告
【報告①】 「航空自衛隊における救難部隊創設の経緯」防衛大学校 村上 強一
討論 防衛研究所 中島 信吾
【報告②】「なぜ在日米陸軍は撤退したのか ―防衛責任の移管の観点から」防衛大学校 相原 正明
討論 東京工業大学 川名 晋史
【報告③】「パリ講和会議における南洋諸島問題の議論」海上幕僚監部 本名 龍児
討論 防衛大学校 相澤 淳
○司会 聖学院大学 宮本 悟
(休憩・昼食)12:00 ~ 12:50
理事会 12:00 ~ 12:40 社会科学館1階 大会議室
資料館開放 12:00 ~ 12:30
総 会 12:50 ~ 13:10 社会科学館3階 大教場
午後の部 研究報告部会 13:20 ~ 16:50
共通部会 「安保関連三文書と日本防衛の課題」 社会科学館3階 大教場
基調講演
①「安保関連三文書の意義と課題 ―政治と歴史の視点から」 京都大学教授 中西 寛
パネリスト報告
②「総合的な防衛力増強と防衛財源の在り方」前防衛次官 島田 和久
③「統合司令部の設置をめぐる課題―統合運用と日米共同の視点」元統合幕僚副長 住田 和明
④「離島防衛をめぐる課題」元陸上総隊司令官 髙田 克樹
⑤「統合運用体制下の優先課題」前自衛艦隊司令官 湯浅 秀樹
⑥「統合防空ミサイル防衛の意義」元航空総隊司令官 武藤 茂樹
司会 東京国際大学教授・防衛大学校名誉教授 武田 康裕
意見交換 17:15 ~ 18:00 学生会館2階「丼丸」
【7月2日(日)】(2日目)
午前の部 研究報告部会 10:00 ~ 12:00
部会2 「反撃能力」の課題 社会科学館3階 大教場
○報告
①「『反撃能力』政策上の課題」 国際大学 信田 智人
②「自衛隊の反撃能力運用に必要な“Kill Chain”と日米共同の課題」元航空自衛隊補給本部長 尾上 定正
③「スタンド・オフ・ミサイルの実現に当たり」防衛装備庁次世代装備研究所 稲石 敦
司会 防衛大学校 大原 一郎
討論 日本安全保障戦略研究所 髙井 晉
(休憩・昼食)12:00 ~ 13:00
編集委員会 12:10 ~ 12:50
防大ツアー 12:00 ~ 12:40
午後の部 研究報告部会 13:00 ~ 17:15
部会3 日本の防衛体制の強化に資する技術開発上の課題 13:00 ~ 15:00 社会科学館3階 大教場
○報告
①「魚型UUVに関する研究動向について」防衛大学校先端学術推進機構 寺田 大介
②「電磁波領域利用の現状と課題」富士通システム統合研究所安全保障研究所 渡辺 辰悟
③「指揮統制へのAI適用研究について」防衛装備庁次世代装備研究所 濱野 健二
司会兼討論 元防衛装備庁防衛技監、未来工学研究所研究参与 外園 博一
討論 防衛大学校 山本 雅司
部会4 日米防衛協力: 日米防衛の認識のギャップ 15:15 ~ 17:15 社会科学館3階 大教場
○報 告
①「中国の軍事演習の意味と台湾の対応」拓殖大学 門間 理良
②「島嶼防衛では米国海兵隊に何を期待するのか?」元東部方面総監 磯部 晃一
③「拡大抑止の運用をめぐる日米のギャップ」拓殖大学 川上 高司
司会兼討論 慶應義塾大学 細谷 雄一
* * *
参加お申し込み方法および諸注意等
〇研究大会への参加を希望される方は、6月21日(水)までに学会HPのお申込みフォームからお申し込み下さい。フォームが利用できない場合はメール又はFAXでのお申し込みも受け付けます。住所・氏名・所属・参加予定セッションを明記して学会事務局までご送信下さい。
〇レジュメは、6月27日(火)から7月3日(月)までの間、学会HPに掲載します。アクセスに必要なパスワードは、参加お申込時の返信メール又は返信FAXに記載いたします。
〇研究大会申込時の返信メール又は返信FAXを当日の入門証として使用しますので、必ず印刷して持参し、防大正門通過時に提示して下さい。なお、防大内への入門開始時刻は最初の部会開始の1時間前(7月1日は8:40、7月2日は9:00)となります。それ以前にご来場いただいても入門できませんのでご注意ください。
〇研究大会参加者には、参加費として千円を申受けます(非会員および機関誌購読会員の方は2千5百円)。また、意見交換参加費は2千円です。非会員の方もお申込みいただけます。いずれも、当日、大会受付にてお支払い下さい。※意見交換への参加をキャンセルされる場合は、お手数ですがメール等でご一報頂けますと幸いです。
〇コロナ対策のため、参加者は室内ではマスクを着用し、入退館時の消毒等の措置にご協力下さい。なお、大会当日、37.5 度以上の発熱者の方は入場をお断りさせて頂きます。
〇 本研究大会では忌憚のない意見交換を促すため、発言者の身元秘匿を原則とするチャタムハウスルールで運営します。会場内の録音、写真・動画撮影は全面禁止です。
〇 昼食は、学生会館2階の海鮮丼専門店「丼丸」及び校内に出店予定のキッチンカーを利用できます。また、20食限定で弁当(お茶付き1,000円)を販売します。学生会館1階ファミリーマートでお弁当類を販売していますが、数に限りがありますので、馬堀海岸駅前のローソンや西友等で事前に購入して持参されることをお勧めします。お弁当の喫食場所は、学生会館1階・2階のホールを利用いただけます。
〇会場にて、1日200杯限定、1杯100円でアイスコーヒーを提供します。現金のみ利用可能ですので、利用される方は小銭をご用意下さい。
〇学会員で研究大会参加のために、当日、託児所を利用される方には、保育料の半額(1日当たり5千円を上限とする)を支援します。
① お申込みフォームの託児所支援サービス欄にチェックし、
② 本学会HPの「令和5年度研究大会のご案内」―「託児所支援サービスお申込み」から所要の手続きを行ってください。
〇学会費(年会費8千円)未納の方は、ホームページに記載の口座まで納入下さるようお願いします。
〇防衛大学校までの道順並びに会場案内は、「交通案内」「校内案内図」をご覧下さい。
【令和5年5月18日版】における修正箇所
・受付場所を「社会科学館3階」に変更(併せて受付開始時刻を変更)
・意見交換会場を「丼丸」に変更
・大会名を「令和5年度研究大会」に統一
・諸注意に「キッチンカーの出店」について追記
・部会1「自由論題」の討論者及び司会者を追記
【令和5年6月27日版】における修正箇所
・相原正明先生、中西寛先生、武藤茂樹先生及び磯部晃一先生の報告論題を一部修正
・諸注意に「20食限定で弁当を販売する」旨を追記