日本防衛学会 第9回(平成23年度)研究大会の報告
日本防衛学会第9回(平成23年度)研究大会は、防衛大学校の協力を得て、11月25日(金)及び11月26日(土)の両日にわたり、防衛大学校記念講堂、社会科学館大教場において開催され、「特別講演」は昨年同様、防衛大学校全学生が聴講する防衛大学校「課外講演」との合同で実施されました。
特に本年は、3月11日の東日本大震災(地震、大津波、原発事故)の発生により、自治体の機能不全・通信不全という未曾有の複合事態の中で、自衛隊が“最後の拠り所”として約10万人規模の陸海空統合任務部隊(JTF)を編成し、直ちに災害救助活躍にあたったという実績を踏まえ、「東日本大震災における自衛隊災害派遣の実態と課題」を主なテーマとしてプログラムを組みました。
大会の第一日目は、まず記念講堂において、初代自衛隊総合任務部隊指揮官を務められた君塚栄治陸上幕僚長による特別講演「東日本大震災における自衛隊統合任務部隊指揮官として-東日本大震災対処とそのリーダーシップ - 」が行われました。
特別講演の終了後、会場を社会科学館大教場に移し、渡邉昭夫会長の研究大会開催の挨拶の後、同じく、この度の大震災の災害派遣において重要な役割を果たされ陸海空前将官を報告者としてお招きし、シンポジウム「自衛隊災害派遣の実態と課題」が冨澤暉当会副会長の司会により行われました。
本シンポジウムの中で特に印象に残った議論は、自衛隊を“最後の砦”としても、いつでも(あたかも「ドラえもん」に頼めば“何でも出てきて”)助けてもらえると安易に考えてはならない、ということでした。
シンポジウムの終了後、本館大会議室において講師、報告者等を囲んでの意見交換会(懇親会)が実施されました。
大会の第二日目は、部会1「自由論題」として5人の会員による専門的分野からの研究発表が行われ、引き続き、部会2「軍事・科学技術の現状と課題」では、“放射線探知・防護技術”をテーマにこの度「フクシマの英雄たち」の一人としてスペイン皇太子賞を授与された岩熊真司中央特殊武器防護隊長や新進気鋭の研究者による報告が行われました。
さらに部会3「危機管理・国民保護対策」では、“原子力発電所等原子力施設にかかわる対ゲリラ・テロ対策の課題”として原子力安全基盤機構の中込良廣理事長や対テロ問題の専門家矢野義昭会員による研究報告が行われ、核セキュリティに対する認識の問題、並びに原発に対する警備態勢について熱心な討議がなされました。
最後に、東日本大震災復興構想会議議長を務められている本会名誉会長の五百旗頭真防衛大学校長が「東日本大震災と復興」と題して記念講演をなさり、本研究大会の幕を閉じました。
なお、研究大会の主な内容は、機関誌『防衛学研究』第46号(2012年3月末刊行)に掲載される予定です。










プログラム
開催日 :平成23年11月25日(金)~11月26日(土)
会 場 : 防衛大学校 記念講堂、社会科学館大教場
第一日目 11月25日(金)13:10~17:30 〔開場:12:40〕
特別講演 〔13:10~14:40(質疑応答含め)〕記念講堂(1時間30分)
講 師 : 君塚 栄治 陸上幕僚長(初代自衛隊統合任務部隊指揮官)
演 題 :「 東日本大震災における自衛隊統合任務部隊指揮官として 」
シンポジウム 〔15:10~17:30〕 (2時間20分)
テーマ:「 自衛隊災害派遣の実態と課題 」
報告者:
陸自から: 火箱 芳文 前陸上幕僚長
海自から: 高嶋 博視 前横須賀地方総監
空自から: 長島 修照 前航空幕僚副長
コメンテータ
メディアから: 勝股 秀通 読売新聞調査研究本部主任研究員
学者から: 鎌田 伸一 防衛大学校教授・総合情報図書館長
司会兼討論者 富澤 暉 日本防衛学会副会長
【懇親会】 17:50~19:10
第二日目 11月26日〔土〕9:30~17:30 〔開場 9:00〕
研究報告
部会1「自由論題」 〔9:30~11:50〕 (2時間20分)
報告者
①平山 実(防衛大学校統率・戦史教育室准教授・2等陸佐)
災害における口述記録の活用に関する一考察
~三陸海岸大津波(1896,1933,1960)、関東大震災(1923)、
阪神大震災(1995)、東日本大震災(2011)を事例として~
②大井 昌靖(防衛大学校国防論教育室准教授・3等海佐)
防空法の功罪~応急復旧はなされたのか~
③共同発表:道本光一郎(防衛大学校国防論教育室教授・1等空佐)・
倉石治一郎(同准教授・3等陸佐)
地球環境問題が自衛隊等の行動に与える影響について
④阿部 亮子(国際情勢研究所研究員)
英国陸軍と戦争学
⑤田中 誠(防衛大学校国防論教育室准教授)
国際刑事裁判所と正義の限界
司 会 河野 仁(防衛大学校公共政策学科教授)
【臨時総会】〔12:45~13:15〕 (30分)
部会2「軍事・科学技術の現状と課題」 〔13:20~14:40〕
テーマ:“ 放射線探知・防護技術 ” (1時間20分)
報告者:
①岩熊 真司(中央特殊武器防護隊長・1等陸佐)
②松村 徹(防衛大学校応用物理学科助教)
③金谷 泰宏(国立保健医療科学院健康危機管理研究部長)
司 会: 岩城 征昭(元陸上自衛隊化学学校長・元陸将補)
部会3「危機管理・国民保護対策」 〔14:50~16:20〕(1時間30分)
テーマ:“ 原子力発電所等原子力施設にかかわる対ゲリラ・テロ対策の課題 ”
報告者:
①中込 良廣(京都大学名誉教授、原子力安全基盤機構理事長)
Design Basis Threat に基づく日本の原子力施設における
危機管理の現状と課題
②矢野 義昭(日本安全保障・危機管理学会理事)
原発の警備体制の問題点と対応策
討論者: 岩田修一郎(防衛大学校国際関係学科教授)
司 会 : 加藤 朗(桜美林大学教授・同大学国際学研究所所長)
記念講演 〔16:30~17:20〕 (50分)
講 師 : 五百旗頭 真 防衛大学校長(元東日本大震災復興構想会議議長)
演 題 : 「 東日本大震災と復興 」
司 会 : 渡邉昭夫 日本防衛学会会長
※参加費(資料代を含む):会員千円、非会員2千円を当日申し受けいたします。
※懇親会費は4千円となります。